
S.O.S. Band / No Lies
鋭いシンセと重厚808が躍動する、Jam & Lewis黄金期のElectro Boogie
『The Finest』の陰に隠れたもうひとつの傑作
1986年にリリースされたS.O.S. Bandのシングル No Liesのレコメンド。バンドとしては後期アルバム Sands Of Time からカットされた1曲で、多くのリスナーにとって同時期のヒット曲 The Finest の存在が大きいため、この曲はやや見落とされがちな存在かもしれませんね。しかし針を落とせばすぐに解るのは、このナンバーがS.O.S. BandとJimmy Jam & Terry Lewisの黄金タッグが生み出した、実に完成度の高いElectro Boogieであるというコトです。80年代中盤、R&Bとエレクトロニクスが高い次元で融合していく時代の空気を、そのまま音に閉じ込めたような作品と言えるでしょう。
Jam & Lewisが描く立体的なサウンドデザイン
イントロからすでに空気は張り詰めています…TR-808のタイトなビートが冷静に刻まれ、そこへアタックの強いシンセベースが地を這うように入り込む…さらに煌びやかなシンセのリフが空間を切り裂くように鳴り響き、音のレイヤーがイッキに立体的なグルーヴを形成していきます。この時代のJam & Lewisのプロダクションに共通する特徴でもある、深いリバーブで満たされた空間設計と精密なリズム構築…そのサウンドは一聴すると「いつものJam & Lewis節」にもカンジられるのですが、実際には1曲ごとに細部のニュアンスが驚くほど異なり、聴けば聴くほどその緻密な音作りに引き込まれていきます。機械的なビートと温かみのあるシンセワーク、その絶妙なバランス感覚は彼らならではの職人技ですね。
Mary Davisのヴォーカルが吹き込む人間味
そしてこの曲の最大の魅力は、S.O.S. Bandの持つメロウな側面から一歩踏み出した攻撃的とも言えるElectro Boogieの質感でしょうね。鋭利なシンセのフレーズが夜の空気を切り裂く一方で、Mary Davisの艶やかなヴォーカルが機械的なビートの上に温度を与えていく…この冷たいエレクトロニクスと人間味ある歌声のコントラストこそが、この曲を唯一無二のものにしているんでしょうね。リリックのテーマはタイトル通り「嘘のない関係」…恋愛において正直であるコトの大切さを歌った内容で、強いビートの中にも誠実なメッセージが込められています。Mary Davisの表情豊かなヴォーカルワークが、そのストレートなメッセージをより印象的に伝えてくれます。
12インチだからこそ体感できるElectro Boogieの真価
当時のクラブシーンでは、Jam & LewisプロデュースのサウンドはR&Bとダンスミュージックの境界を越えてDJたちに愛されていました。特に12インチ・シングルでは、低域のシンセベースとドラムマシンのキレ味がダンスフロアで真価を発揮し、フロア向けのBoogieトラックとして確かな存在感を放っていました。耳に突き刺さるシンセの鋭さ、地を這うようなボトムエンド、そして都市の夜景を思わせるネオンのようなサウンドスケープ…まるで真夜中の摩天楼を音に変換したかのようなこのグルーヴは、80年代 Electro Funkの醍醐味そのものですね。S.O.S. BandとJam & Lewisが築き上げた洗練されたサウンドデザインを存分に味わえるこの1曲…Boogie好き、Electro Funk好きのDJであれば、ぜひレコードで体感してほしい1枚ですっ!


